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【追記:連載開始しました】Webメディアで小説連載を始めます。

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【2018/01/04追記】

ということで、Webメディア「anotekonote」において、『HR』の連載がスタートしました。上記の通り2回目以降の更新は毎週金曜になります。よくある「つづきは有料」みたいなことは一切ありません。全文無料公開です。現時点で公開されているものはこちらにまとめられていますので、どうぞお気軽に読んでみてください。


求人広告業界を描く企業小説『HR』

タイトル通りなのですが、2018年の年明けから、あるWebメディア上で小説を連載することになりました。タイトルは『HR(エイチアール)』で、僕が20台半ばから10年以上に渡って身を置いた求人広告業界を舞台にした小説です。こちら初回が1/4(木)の公開で、2回目以降は毎週金曜に更新をしていく予定です。


そもそもなんで小説?

お仕事で繋がっている方からすると、児玉達郎=ライターやデザイナーであり、「小説」というイメージはないかもしれません。ただ実はわたくし、ライターやらデザイナーやらである前に小説家(志望)なのです。広告業界に入ったのも「小説執筆の技術を働きながら向上させることはできないか」という(広告業界からしたら若干不純な)理由だったりもしますし、独立しておかげさまでいろいろなお仕事をさせてもらえるようになった今でも、「よし、食えるようになったから小説はもういいか」とは1%も思いません。要するに夢なんです。小説家になることが。

それで、かれこれ15年ほど、頑張って小説を書いては公募の文学新人賞に送り続けてきました。でも、最初の10数年は、驚くほど「箸にも棒にもかからない」状態で、一次選考すら通らない。その後、ごくごく小さな私的文学賞のようなもので賞をいただいたことはありましたが、本当にそれくらいで、いわゆる「商業デビュー」に繋がるような成果は全く出ませんでした。

何ヶ月もかけて一生懸命書いた作品があっさり落選するわけですから、当然ショックです。でも、「じゃあ書くのをやめよう」とはならない。なぜなら、そもそも目的が「受賞」ではないからです。新人賞で入賞することは商業デビューの「手段」に過ぎず、その商業デビューも「小説家として喰っていくこと」の手段に過ぎず、その小説家として喰っていくことも「好きな小説を好きなように書き続ける」ための手段に過ぎない。要するに自分は「小説を書くのが好き」だから続けているのであって、だから「受賞できないんだったら小説家になるのやーめた」という発想は出てこないわけです。

「小説家なんて今どき稼げないよ」「デビューしたところで生き残るのは一握りさ」「紙の本なんてそのうち絶滅する」というようなツッコミも、だから僕には全然効かない。それは順番が逆なんですよ。小説を書きたい、小説家になりたい、というよくわからない強烈なエネルギーがまずあって、じゃあ書いてみよう、書けたから応募してみよう、という流れなのであって、そもそもが打算的な行動じゃない。だって、稼ぐために小説家という道を選ぶなんてまともじゃないでしょ。「俺メッチャ稼ぎたいから小説家になる!」なんて言ってる人がいたら全力で止めます。「稼ぎたいならこんな非効率な道を選ぶな!」って。


いきなり訪れた転機

まあそういうわけで、受賞どころか予選通過すらできないまま10数年やってきたわけですが、2年ほど前にちょっと執筆方法を変えて応募してみたところ、いきなり出版社から電話がかかってきた。「児玉さんの作品が一次審査を通過しました」と言われ当然うおおお、となったんですが、その時点では「ああ嬉しい。やっと一次審査が通過できた。いい記念になった」っていう感覚。まさか次の二次審査が通るとは思っていないわけです。

でも約1ヶ月後、また電話がかかってきた。で、「児玉さんの作品が二次審査を通過し、最終審査に残りました」とか言うわけです。人間驚きすぎると呆然としちゃいますね。どう受け答えしたのかも覚えていませんが、動悸が半端なかったのは間違いない。

ちなみにその時に応募していた文学賞は「横溝正史ミステリ大賞」で、応募作品名は『輪廻の月』。で、たしかに最終選考にかけられまして、結果、選ばれませんでした。選考当日、ドキドキしながら仕事してたんですが、電話がかかってきまして、「残念ながら……」と。生意気にもショックを受けて、その日は会社から家まで歩いて帰ったなあ(1時間くらいかかった)。

ちなみにそのとき受賞されたのは逸木裕さんの『虹を待つ彼女』という作品で、発売された後に読ませてもらいましたが、なるほどやっぱ受賞作はうまいなあと思いましたね。

そして現在

その後、1年ほどかけて長編を1本書きまして、それはラスト16作品には残りましたが落選。ただ、かなり駆け込みでの応募だったので、それから半年近くかけて推敲をして、大きく修正をかけた上で別の文学賞に応募しました(落選が確定した後に別の文学賞に応募することは二重投稿にはあたりません)。

現在はその結果待ちという状態なのですが、そんな中でいただいたのが、冒頭書いた今回のWebメディア上での連載、という話でした。正直、最初は少し迷いました。小説というある種の「聖域」を、ビジネスに関わるWebメディア上に引っ張り出すことの抵抗というか。実際、そのメディアが経営者向けのサイトということもあって、本来の自分が好きな、残酷で救いがなくてグロい小説を書くわけにもいきません。ターゲットに合わせた、あるいはメディアのコンセプトに合わせた内容の作品を書いていく必要があるわけです。

ただ一方で、チャンスだとも思いました。こういう機会でもなければ、自分はきっと、「残酷で救いがなくてグロい小説」ばかりを書いていたでしょう。それはそれで楽しいし、自己満足感はあるのでしょうが、井の中の蛙的な悲しさがある。そう思うと、今回の話が途端に魅力的に思えてきました。何より、そう何より、自分の中に居座り続けている「彼」が、乗り気になってしまった。彼の頭の中では既に、今回の作品の世界設定やプロットが作られ始めていたのです。

そういうわけで

さて、そういうわけで、『HR』です。ジャンル的には企業小説、お仕事小説って感じになるんでしょうか。まだ1話分しか書き上げてませんのでどうなっていくのかはわかりませんが、自分の得意ジャンルではないことがむしろ楽しさに繋がっている気がします。まあ、話の中で誰も死なないし襲われないし狂ったりもしないし、安心して書けるってのはあるんだろうな。

気付いたら思いのほか長文になってしまいましたが、1/4から連載が始まる『HR』の紹介でした。毎週金曜の朝に更新していく予定ですので、よろしければ読んでみてください。よろしくお願いします。